246 W 44th St New York, NY 10036(地図)
開業:1956年|所有劇場数:5
Jujamcyn Theaters|基本情報
Jujamcyn Theatersの歴史
創始者ジェームス・ビンガー(James H. Binger)について
劇団設立者であるジェームス・ビンガーは、ミネソタ州東部に位置するセントポールで生まれ育ち、聖パウロ・アカデミー学校在学中に妻のバージニア・M・ビンガーと出会いました。その後、ミネソタ・ロー・スクール大学で法学士を取得した彼は、卒業後ミネアポリスの法律事務所で、電子制御システムや機器の製造販売会社ハネウェル(Honeywell)の顧問弁護士として働いていましたが、1943年にハネウェルから引き抜かれニューヨークに進出、1961年に社長就任、1965年には会長に就任しました。ジェームスは会長に就任にあたり、海外に6つの生産拠点を作って事業を大きく拡大、売り上げよりも利益を重視した販売方法に改善し、アメリカ航空宇宙局、ボーイング、アメリカ国防総省に技術サービスを提供する世界のIT産業を代表する企業にまで成長させました。ビジネスに非常に優れていたジェームスは、1978年の会長引退後も亡くなるまでハネウェルの相談役として企業の繁栄に携わりました。
ユージャムシン劇団(Jujamcyn Theaters)の誕生
そんなジェームスがユージャムシン劇団を設立するきっかけとなったのは、1956年に彼の妻バージニア・M・ビンガーの父であり、世界的化学・電気素材メーカー3M社(3M Company)の設立者ウィリアム・L・マクナイト(William L. McKnight)が、当時ニューヨークとボストンに所有していた2つの劇場:セントジェームズ劇場(St. James Theatre)とコロニアル劇場(Colonial Theatre)を売りに出すため、ジェームスに相談したのが始まりでした。
その後、ユージャムシン劇団は、1965年にアル ハーシュフェルド劇場 (Al Hirschfeld Theatre)、1981年にオーガスト ウィルソン劇場(August Wilson Theatre)とウォルター・カー劇場(Walter Kerr Theatre)、1982年にユージン オニール劇場(Eugene O’Neill Theatre)を買収し、現在ではユージャムシン劇団の本拠地であるセントジェームズ劇場を含む、計5つの劇場を所有しています。また、劇場の運営だけでなく、ミュージカル作品の制作にも携わっているユージャムシン劇団は、2001年4月19日にセントジェームズ劇場で公開したミュージカル「プロデューサーズ(The Producers)」で、同年のトニー賞でミュージカル作品賞を含む12部門で受賞、4部門でノミネート、公演回数2,502回にも及ぶロングラン作品を生み出し、ブロードウェイ上の約3分の1の割合を占める売上を叩き出しました。この快挙は、ユージャムシン劇団の存在をブロードウェイ界に広めただけではなく、ブロードウェイでまだ5つしか劇場を所有していない小規模な団体を、ブロードウェイにおいて3番目に大きい劇場運営団体に押し上げる結果となりました。
二代目社長ジョーダン・ロス(Jordan Roth)とJersey Boys
2002年にジェームスの妻バージニア・M・ビンガーが他界し、2004年にジェームス・ビンガーが他界した後は、社長ジョーダン・ロス(Jordan Roth)がその座を引き継ぎました。ジョーダン・ロスは、24歳の時から舞台プロデューサーとして活躍し、トニー賞ノミネート作品「ロッキー・ホラー・ショー(The Rocky Horror Show)」などのミュージカル作品を制作していました。
2018年3月からは大人気ディズニー映画「アナと雪の女王(Frozen)」がセントジェームズ劇場でブロードウェイデビューとなり、今後もブロードウェイ界を代表する運営劇場団体の1つとして、ユージャムシン劇団の活躍が見逃せません。
Jujamcyn Theatersの業務体系
ユージャムシン劇団は、ニューヨーク・マンハッタン内で5個のオン・ブロードウェイ劇場を所有・運営しており、その劇場で公演されたミュージカル作品のチケットやグッズ販売の売上で利益を上げていますが、ジェームス・ビンガーは団体の運営にあたり劇場運営の保持だけでなく、不動産、制作、新しいミュージカル作品の開発や脚本など様々な分野と連携して事業を行うことで、独自の利益を生み出すビジネスモデルを確立しています。
ミュージカルの自社制作
ユージャムシン劇団は、1977年から現在まで約80個にも及ぶミュージカル作品を手がけています。代表作として、1993年公開の「マイ・フェア・レディ(My Fair Lady)」と「エンジェル・イン・アメリカ(Angels in America: Perestroika )」、1997年公開の「アニー(Annie)」、1998年公開の「サウンド・オブ・ミュージック(The Sound of Music)」、2000年公開の「プルーフ(Proof)」などが挙げられ、数々のトニー賞受賞作品を輩出しています。
チケット販売(Ticketing Service)
劇場のチケット窓口での販売は勿論のこと、オンラインにて「ロタリーチケット(Lottery Ticket)」と呼ばれる抽選に当たると安価に当日券が購入できるシステムを導入しています。ユージャムシン劇団公式サイト(英語)から観劇したい作品に名前・メールアドレス等の個人情報を登録するだけで完了です。抽選に当たった方のみ連絡が入り、料金を支払い、チケットを入手する方法となりますが、10~40ドルでチケットを購入することが可能なので、座席の位置や見やすさを気にしないでとにかく安く観劇したい、という方にお勧めです
ユージャムシン賞(Jujamcyn Award)
1984年にジェームス・ビンガー率いるユージャムシン劇団によって、慈善事業の一貫として作られてたユージャムシン賞(Jujamcyn Award)は、劇場や作品のために、技術や演出の開発に最も貢献したアメリカ全体の劇場運営団体に向けて表彰される賞で、受賞者には$50,000ドルから$100,000ドルの賞金が贈られます。ニューヨークでの受賞者は、1988年にヘレン ヘイズ劇場(Helen Hayes Theatre)の所有団体であるセカンド・ステージ・シアター(Second Stage Theatre)、1991年にニューヨーク・シェイクスピア・フェスティバル(New York Shakespeare Festival)、2001年にサミュエル J フリードマン劇場(Samuel J. Friedman Theatre)の所有団体であるマンハッタン・シアター・クラブ(Manhattan Theatre Club)などが挙げられ、地方でユージャムシン賞を受賞した劇団は、トニー賞の特別賞である地方劇場トニー賞(Regional Theatre Tony Award)(※)としても認識されています。1984年から2004年まで毎年1回行われていたユージャムシン賞ですが、2004年に、主催者兼スポンサーであったジェームス死後以降は、2007年に劇団「Irish Repertory Theatre」が受賞した以降は開催されていません。
※地方劇場トニー賞:NY市以外にある地方劇場の功績を称える賞