ブロードウェイへの道標 Vol. 1 – 海外の舞台で活躍中 大野拓朗さんへのインタビュー

ブロードウェイへの道標 大野拓朗さんにインタビュー

ロンドン・ウエストエンドで上演中の『パシフィック・オーバーチャーズ』の一場面 (Photo credit Manuel Harlan)

テレビドラマや映画、ミュージカル『プロデューサーズ』、『進撃の巨人-the Musical-』等の舞台作品に出演してきた俳優・大野拓朗さん。2019年~2020年のニューヨークでの語学留学を経て、その後も何度かニューヨークを訪れ、ブロードウェイの舞台を多く鑑賞。また、2024年2月現在、ロンドンでの舞台『パシフィック・オーバーチャーズ(邦題:太平洋序曲)』に出演中。日本、ニューヨーク、ロンドン・ウエストエンドで演劇に触れ、経験を積んできた大野さんに、日本と海外の舞台の違いや、日本の役者が海外の舞台に立つまでの道についてインタビューしました。

影響力を持てる人になりたいと役者の道へ。ミュージカルの世界へのめり込んでいった

大野拓朗さん主演の舞台「ロミオ&ジュリエット」

2019年上演の舞台『ロミオ&ジュリエット』にて(ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』2019公演事務局 撮影田中亜紀)

──どのような経緯でミュージカルへの挑戦が始まりましたか?

「芸能界に入ったのは大学生の時です。立教大学でプロスポーツ選手のメディカルトレーナーを目指して学んでいましたが、ひょんなことから出場した大学のミスターコンテストでグランプリを取り、芸能事務所からオーディション参加へのお声がかかりました。そこでまたグランプリを頂いて、そのまま芸能界に入り、俳優デビューをしました。オーディションの時の演技レッスンで初めて芝居に触れ、楽しいなと思ったのを覚えています。演技をするのは実に小学校の学芸会以来でしたが、心惹かれるものがありました。

僕は元々「世界中の恵まれない動物を救いたい」という夢があり、そのために影響力のある人と一緒に仕事をするべきだと思っていました。プロスポーツ選手のメディカルトレーナーを目指していたのも、1つは人に夢や感動を与えられるスポーツが好きだったから。そして、人の心を動かすほどの影響力のあるスポーツ選手たちと一緒にプロジェクトを立ち上げれば、より多くの動物を救えると思っていたからです。なので俳優の道に進んだ時、自分自身が影響力を持つのも1つの手かもしれないと思い、挑戦してみようと決意を固めました。

ミュージカルに出演するようになったのは、芝居の勉強のために事務所の先輩が出演するミュージカルを観たのがきっかけでした。その時ほぼ初めてミュージカルに触れたのですが、「こんなに現実離れした楽しい世界があるんだ!」「夢の塊の世界だ」と感動して自然と涙が流れてました。突然歌ったり踊ったりって日常生活ではないじゃないですか。ミュージカルのエンターテインメント性に魅了され、それからよく観るようになりました。

そんな経緯でミュージカルを観るようになり、じきに自分もあの舞台に立ちたいと思うようになりました。当時は俳優として誇れる武器が何もなかったので、1つ得意分野を作れたらと思い、歌のトレーニングを始めました。そこからミュージカルの舞台で経験を重ね、気付けば海外のミュージカルに出演するまでになりました。」

大野拓朗さん主演の舞台「プロデューサーズ」

2020年上演の舞台『プロデューサーズ』にて井上芳雄さん、大野拓朗さん (c)Toho Co., Ltd.

──海外の舞台に挑戦しようと思ったきっかけはあったのでしょうか?

「小さな頃から洋画ばかり見ていて、海外の景色にずっと憧れがありました。世界中を飛び回る仕事につきたいとその頃から夢見ていたと思います。30歳になる時に「何で海外を飛び回りたいと言ってるのに英語が喋れないんだろう?」と気付き、今行くしかない、と決意しました。人生を後悔しないように、日本に留まらず世界に出たかったのです。

海外の舞台に挑戦しようと思ったきっかけは、思わぬタイミングでやってきました。本当なら今の時期に海外に引っ越して、語学のスキルを磨き、海外で芝居の仕事をするための準備をしようと思っていました。そんな矢先にロンドン・ウエストエンドで上演されるミュージカル『Pacific Overtures(パシフィック・オーバーチャーズ、邦題:太平洋序曲)』のオーディションのお話を頂きました。正直なところ当時の自分はまだまだ準備不足だと思っていましたし、お話を受けようか悩んだのですが、折角頂いたチャンスですし、もしダメだったとしても失うものはないと周囲の人たちにも説得して頂き、挑戦するに至りました。幸運にも合格を頂けたので、今こうしてロンドンの舞台に立てています。

計画とは違いましたが、こうしてチャンスを頂きいきなり本番の舞台に立ったことで、やるしかないと背水の陣のごとく挑めていますし、リハーサル期間も含めこの4か月間で大きく成長出来ました。今回、この決断をして心からよかったなと思っています。

海外に出て、海外の作品に出演したことで海外の良さ、そして日本の良さにも気付けました。確実に視野が広がりました。」

ニューヨークの舞台はエンターテイナーが立つ場所。「敵わない」と悔しくて泣いたことも

ブロードウェイへの道標 大野拓朗さんにインタビュー ニューヨーク

ニューヨークにて

──日本と海外の舞台の違いはどんなところでしょうか?

「沢山ありますが、まずは出演者それぞれの個性の強さの違いです。例えばアンサンブル。ブロードウェイやウエストエンドのアンサンブルは、アンサンブルで修行を積んで、オーディションでメインの役を勝ち取るという流れがあるので、アンサンブルであろうが自分の良いところを見せてやるという気概が個々に感じられます。なので良く言えば1人1人が輝いていて個性的、悪く言えば皆バラバラの動きをしています。対して日本はアンサンブルの動きが揃っていて、全体的にレベルがとても高い。みんなが高いレベルで揃っているのは、芸術的に素晴らしいことです。どちらが良いという話ではありませんが、面白い違いです。

また、日本のカンパニーはサムライスピリッツで、「ここをやる!」と決めたことは時間が押そうが終わらせるという根気がまだ強く残っています。ここは日本の強いところかなと思っています。対してイギリスは(恐らくアメリカもそうだと思うのですが)、稽古の時間はきっちり決められていて、決めたことが終わってなかったとしてもその時間で切り上げてしまいます。」

──メジャーリーガーの練習の時間も1時間くらいしかないから相当集中しないと練習できないと聞きますね

「それが逆にいいのでしょうね。絶対にその時間で集中するという潔さはありますし。これもどちらが良いという話ではないんですけどね。また、ロンドンの舞台を経験して、幕が開くときの完成度についても日本との違いを感じました。今回の舞台(パシフィック・オーバーチャーズ)が特に稽古期間が1か月と短くて…日本は最低1か月半はあるので。なので、意外と準備がちゃんと出来ていない状態で幕を開けるんだなという感覚はありました。勿論やっていく中で修正、改善をしていくわけなのですが、「お客様にお金を払って観に来て頂くからには、幕が開くまでにきちんと完成度を高めよう」という日本のカンパニーの考え方とは違うんだなと気付きました。」

ニューヨーク語学留学

ニューヨークにて

──なるほど。ここから少しニューヨークについても質問させて頂きます。ニューヨークにはどのような経緯で、どれくらいの期間いらしたのでしょうか?

「ニューヨークには2019年の12月から2020年の7月まで語学の勉強のため滞在していました。見事にパンデミックのロックダウン期間に当たってしまいましたが、逆に勉強に集中できたと思います。留学をすると決めた時、行先をイギリスにするか、アメリカのロサンゼルスにするか、ニューヨークにするかで迷っていました。ハリウッド映画を見据えてアメリカ英語を学びたかったのと、ロサンゼルスだと車が必要になってしまうので、結果的にニューヨークを選びました。ニューヨークは大好きなブロードウェイミュージカルを鑑賞出来るのも魅力でした。結局パンデミックで劇場街が閉鎖されてしまったため、留学中は2作品くらいしか観ることが出来なかったのですが(笑)一度帰国した後も何度もニューヨークを訪れていて、パンデミック後はブロードウェイの作品をいくつも鑑賞できました。大好きな街です。」

──ハリウッドも視野に入れていたのですね

「そうですね。ミュージカルは観るのも舞台に立つのも好きで、どちらかというと趣味に近い部分がありまして。でも自分の実力的にブロードウェイやウエストエンドの舞台に立てる才能があるとは思えず、海外の舞台に自分が立つことは元々視野に入れていなかったのです。それよりはテレビや映画などの映像作品で海外の作品に出たくて、ハリウッドを目指そうとアメリカに来る前から思っていました。」

──元々舞台でやってやるぞと意気込んで渡米されたのだと思っていました!

「自分の才能にそこまで自信を持てませんでしたから。実際ブロードウェイで観た『MJ the Musical(マイケル・ジャクソン・ミュージカル)』を観て泣きましたもん!悔しくて。「絶対敵わない!」と思ってしまって。ブロードウェイでは役者のパフォーマンス力が重視されているように思います。芝居以上に、歌やダンスの技術が高い、“ザ・エンターテイナー”が立つ舞台。だから、ここに立つには相当なスキルが必要だと思い知らされました。一方ロンドンはブロードウェイよりも芝居に重きを置く傾向があるように思うので、僕はロンドンの方が可能性があるかなと今は感じています。」

古きを重んじながら新しいものを取り入れる柔軟さがニューヨークの魅力

大野拓朗さんニューヨークでの写真

ニューヨークにて (Photo by Keishi)

──ニューヨークの魅力、好きなところはどんなところですか?

「やっぱり活気ですね。経済が活発に動いて、エンターテインメントもレベルが高くて、この街が世界で一番なんだ!と住んでいる人たちが誇りを持っているようなエネルギーを感じます。アメリカを知った上でロンドンに来て改めて気が付いたのですが、あらゆる面でやはりアメリカは規模が大きいなと思います。」

──ブロードウェイの魅力、好きなところはどんなところですか?

「エンターテインメント性です!ブロードウェイの舞台はショーという言葉がぴったり。『MJ』とか『ムーラン・ルージュ』とか、難しく考えず楽しく観られる演目が多い印象です。ニューヨークはエンターテインメントにおいても街並みにおいても、新旧が上手く混合しています。古きを重んじながらも、新しいものはどんどん取り入れる。古い劇場も、真新しいビルも、クラシックな演出も、最先端の技術も、全てこの街の色として生かしていく柔軟さが魅力的です。」

楽しいものを観たなー!と劇場を出られるザ・ブロードウェイ!な作品が好き

ブロードウェイのウォルター・カー劇場

ブロードウェイのウォルター・カー劇場

──好きなブロードウェイミュージカルを教えてください

「2001年~2007年まで上演されていた作品なので実際にブロードウェイ版を観ることは出来ていないのですが、日本で演じさせて頂いた『プロデューサーズ』は特に好きです。この作品こそまさにブロードウェイ!ブロードウェイのプロデューサーになりたい男たちが、試行錯誤とズルをしながら上り詰めていくコメディ作品。風刺とジョークが満載で、難しいことを何も考えず笑えて、誰も不幸にならないハッピーエンドで、至高のエンターテインメントだなと思います。楽しいものを観たなーとスカッとする気持ちだけで劇場を去れるのです。そういうのがブロードウェイの作品の魅力だと思っています。また、『MJ the Musical(マイケル・ジャクソン・ミュージカル)』も同じで、「パフォーマンス凄かったな!」「マイケルジャクソンってかっこ良かったんだな!」と楽しい気持ちで一杯になって、観客も立ち上がって踊って手拍子をしてその場でノリノリになる雰囲気がブロードウェイらしくて素敵でした。あと『レント』も好きです。レントは歌が深く刺さりました。」

──役者さん目線で、良い劇場の条件は何だと思いますか?

「面白い質問ですね。歌いやすさ、音の反響はまず大事です。「この劇場は歌いやすい」「この劇場は客席でも音が良く聴こえる」とか、逆に「この劇場は台詞が聞き取りずらい」など劇場によって評判は分かれます。ブロードウェイの劇場は据え置きの音響設備ではなく、プロダクションによって設備を持ち込めると聞きました。作品の色に合わせて音響設備の調整が出来るのは、質の良い作品を作るためにも良いシステムだなと思いました。

あとは劇場側の柔軟さ。ロンドン(ウエストエンド)の劇場を例に出すと、今回の『パシフィックオバーチャーズ』を上演しているメニエール・チョコレート・ファクトリー劇場は劇場の内装を好きなだけ改造できるのです。なので『パシフィックオバーチャーズ』はど真ん中にステージがあり、両サイドからお客さんが見下ろすような座席配置になっています。また、舞台『バックトゥザフューチャー』のウエストエンド版の劇場には、ロビーを始め劇場内のあちこちにバックトゥザフューチャーの舞台となった時代の看板(TOYOTAの古い看板など)が置いてあり感動しました。舞台を観る前に通るロビーの装飾が作品の世界観を表現しているので、観劇に向けて気持ちも上がりました。やりたい演出やイメージに合わせて劇場をカスタム出来るのは素晴らしいことだと思います。

また、ブロードウェイなどの歴史ある劇場やロンドンに沢山あるオペラハウスのような劇場は足を踏み入れるだけでテンションが上がります。赤絨毯やボックス席を観るだけで「舞台を観に来たんだ」と気持ちが入ります。ブロードウェイやウエストエンドはどこの劇場に行っても感動しました、全部写真に撮りたい!と楽しんでいました。」

「みんな挑戦すればいいのに」と思いながら海外の舞台に立っています

ブロードウェイへの道標 大野拓朗さんにインタビュー

ロンドン・ウエストエンドの『パシフィック・オーバーチャーズ(太平洋序曲)』(Photo by Seigo)

──舞台俳優になりたい、海外で活躍したい日本の挑戦者にメッセージをお願いします

「海外で活躍出来るかは自分のやる気次第です!何歳になっても挑戦するのに遅いということはありませんし、英語も必ずしもネイティブである必要はないと思います。役によってはネイティブレベルの英語力が必要な役もありますが、僕の今回の侍役がそうであるように、逆に日本人のイントネーションがあった方が説得力が増す役もあります。言葉に限らず、侍の仕草とか、侍ってこういうものだという知識、大和魂が文化として身体に染み込んでいるのは日本人だけなので、こういった日本人だから出来る役というのも存在します。なので日本人が世界に行ったら勝てない、と思い込む必要はありません。日本人である利点を採用してもらえる作品に出会えたら、それは大きなチャンスになります。

とはいえ実際「日本人役」「アジア人役」は多くなく、メインキャストに選ばれるのはハードルが高いので、もう少し現実的なアンサンブルの話をしましょうか。日本のアンサンブルのスキルは十分高いと思います。意外かもしれませんが、ロンドンの舞台を見ていて歌やダンスの基礎は日本のアンサンブルの方がしっかりしているなという印象があります。また、最近のダイバーシティを重んじる風潮としてアンサンブルに色々な人種の役者を採用する舞台が増えています。なのでチャンスは絶対にあります。きっと英語というネックがあって挑戦しようと思わないのだと思いますが、同じく30歳まで英語が話せなかった自分も、今は「みんな挑戦すればいいのに」と思いながら海外の舞台に立っています。」

──ブロードウェイに興味のある日本のミュージカルファンにメッセージをお願いします

「ブロードウェイはお客さんの反応も面白いので楽しんで頂きたいです。歓声とか、ブーイングとか、スタンディングオベーションとか、役者たちとお客さんで一緒に劇場の空間を作り上げている、というのがブロードウェイの方がより感じるかもしれません。日本との違いにワクワクするはず。ぜひぜひ世界最高峰のエンターテインメントを肌で感じてください!」

編集後記

ブロードウェイへの道標 大野拓朗さんにインタビュー

『パシフィック・オーバーチャーズ(太平洋序曲)』の劇場・Menier Chocolate Factoryにて (Photo by Seigo)

今回、「ブロードウェイへの道標」という題名でミュージカルを極めた関係者へインタビューを始めることにした。このセクションでは、ミュージカルに携わる様々な人たちの舞台裏を引き出していき、どんな人物がどのような経路を辿って頂点に辿り着いたのかをお伝えできればと思っている。

拓朗さんとは2019年にニューヨークで出会った。容姿端麗で185センチのスタイル。舞台でも一際存在感のあるミュージカル界のスターだ。日本では舞台だけでなく映像作品でも実績を積み上げてきた。その彼がより大きな舞台を目指して単身ニューヨークに武者修行に来ていた。

しかし、そんな拓朗さんでさえ、ブロードウェイの舞台を目の前にすると圧倒的なパフォーマンスの前で実力の差を叩きつけられた。「適わない」と弱音を吐くこともあった。それがブロードウェイの壁の高さという意味だったのだと思う。

ブロードウェイへの道標 大野拓朗さんにインタビュー

『パシフィック・オーバーチャーズ(太平洋序曲)』の舞台 (Photo by Seigo)

拓朗さんは帰国した後も頻繁にニューヨークを訪れミュージカルを鑑賞した。ブロードウェイの壁を忘れない為、自分の位置を確かめる為。また、ニューヨークの空気を吸うとまるでキラキラした顔で「生き返る!」と口癖のように言っていた。もしかしたらこの人はいつか本当にあの舞台の上に立っているのではないだろうか、と既視感のようなものを感じることがあった。

だから、いつか拓朗さんが夢を掴んだ時には、インタビューをさせて頂き、読者にも拓朗さんのことをもっと知って貰いたいと思った。それが今回、実際に実現したのである。

パシフィックオバーチャーズは、幕末の日本が舞台。保守派の徳川方と革命派の尊王攘夷の戦いを描いたアメリカの作品である。1966年にブロードウェイで初演、トニー賞に10部門ノミネートされ、ブロードウェイとウエストエンドで計3回リバイバル公演が行われている。言わば名作中の名作だ。ミュージカルが初めて日本のテレビで放映されたのもこの作品であった。

音楽は、ウエストサイドストーリーで知られるスティーヴン・ソンドハイムによる。ソンドハイムは、ミュージカルのみならず映画音楽や、マドンナに楽曲を提供する等多彩な才能を発揮し、トニー賞をはじめ、ピューリッツァー賞、アカデミー賞、グラミー賞を数多く受章した。ミュージカルのトニー賞においては8回という歴代最多の受賞数を誇る。

ブロードウェイへの道標 大野拓朗さんにインタビュー

『パシフィック・オーバーチャーズ(太平洋序曲)』の舞台 (Photo by Seigo)

拓朗さんは、そのような名作のオーディションで役柄を掴んだ。イギリス人やイギリス在住の日系人でキャスティングされた俳優陣の中で、唯一日本から出演している役者だった。しかも主役で、である。これまでウエストエンドやブロードウェイの舞台で主役を演じた日本人は、ミスサイゴンでの森尚子さん、シカゴでの米倉涼子さん、それと王様と私での渡辺謙さんのみである。こんな名誉なことはない。どうして拓朗さんに白羽の矢が立ったのかと耳を疑うばかりだ、と言っては大変失礼ではあるが、それくらい本場の舞台で主役を演じるということは並大抵のことではない。アンサンブルとは違い、圧倒的な存在感、パフォーマンス、歌唱力、そして何よりも個性が求められる。チームを率いるリーダー的役割も担わなければならない。これは観に行かなければと思いロンドンに立ち寄った次第だ。

ソンドハイムのミュージカルということもあり客席は満席で、古典的なミュージカルを好む年配の方が多くいらしていた。拓朗さんは幕府方の侍役で最後には尊王攘夷の志士に斬られ絶命する。劇中、皆が拓朗さんに感情移入してゆく。最後に新しい明治時代に取って代わられ滅びゆく侍の姿が投影されている。この辺りの心情は丁寧に描かれておりロンドン人にも侍の世の終わりというものが分かり易く演出されていた。最後にはスタンディングオベーションで締めくくられ、前に座られた高齢のご婦人が旦那さんに、I’ve never seen such a good show like this. と感嘆していたことからも、ロンドン人もたいへん感銘を受けていたことは間違いない。

これからも拓朗さんがブロードウェイやウエストエンドの舞台で飛躍していくことを願って止まない。

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